FX、通貨ペアの取引量とシェア, 2025年

FXの通貨ペア、世界でどれだけ取引されているのか

テクニカルトレードでは、インジケーターのシグナルとあわせて「取引量(出来高)がどの程度あるか」も重要な判断材料です
しかしFXの場合、それは基本的にできません。株のように取引所が決まっているわけではなく、世界中で相対取引・店頭取引(OTC)が行われており、また相対取引や店頭取引ゆえにローカルな実際のレートに影響しない取引もあるのがFXの特徴です

目次

  1. BISの世界外国為替市場調査とは
  2. 通貨ペア別のシェア(2025年4月調査)
  3. 通貨別のシェア(USD・EUR・JPY・GBP・CNY)
  4. 国・地域別のシェア(ロンドン・NY・シンガポール・香港・東京)
  5. まとめ

1. BISの世界外国為替市場調査とは

取引しているFX業者の顧客での取引量は見られることがあっても、ワールドワイドではリアルタイムでは分かりません(シカゴ・マーカンタイル取引所の通貨取引出来高から類推する方法もありますが)。

そこで頼りになるのが、国際決済銀行(BIS)が3年に一度実施している「外国為替及びOTCデリバティブ市場に関する中央銀行サーベイ」です。本記事では、2025年4月に実施された最新調査の結果をもとに、通貨ペア別・通貨別・国/地域別の取引シェアを整理します。

BISのOTC foreign exchange turnover in April 2025を見ると、色々と興味深いことが分かります。

このBISの調査は、世界の外国為替市場及び店頭金利デリバティブ市場に関する包括的な調査で、1986年から3年に一度、調査年の4月に実施されています。2025年の調査では52の国・地域の1,100以上の金融機関が参加しました(前回2022年は52の国・地域の1,200以上)。速報値は2025年9月30日に公表され、確報値は2026年前半にBIS Quarterly Reviewとあわせて公表される予定です。

2025年4月の1日あたりの世界の外国為替市場取引額は9兆5,954億ドルと、前回2022年の7兆4,675億ドルから28.5%の増加となりました。2025年4月は、2日にトランプ政権による相互関税が発表されたことをきっかけに市場が大きく変動した時期でしたが、増加率自体は過去の実績の範囲内で、世界の外国為替市場の取引規模は一定の増加傾向を続けています。

2. 通貨ペア別のシェア(2025年4月調査)

以下は2025年4月中の1日あたり平均取引高です。取引量の単位は1billion US$(10億ドル)で、本記事公開時点のドル円レート(1ドル=160円前後)で換算すると約1,600億円程度です。

取引通貨ペアのシェアを見ると、EUR/USDが21.2%で第1位、USD/JPYが14.3%で2位と、前回から順位に変動はありませんでした。一方、前回3位だったUSD/GBPは7.6%まで低下して4位に後退し、代わってUSD/CNYが8.1%まで上昇して3位に浮上しています。

過去の取引高(億ドル)とシェア(%)

通貨ペア 2019年 シェア 2022年 シェア 2025年 シェア
EUR/USD 15,790 24.0 16,950 22.7 20,340 21.2
USD/JPY 8,690 13.2 10,080 13.5 13,720 14.3
USD/CNY 2,700 4.1 4,930 6.6 7,770 8.1
USD/GBP 6,320 9.6 7,090 9.5 7,290 7.6
USD/CAD 2,900 4.4 4,110 5.5 5,090 5.3
USD/AUD 3,550 5.4 3,810 5.1 4,700 4.9
USD/CHF 2,240 3.4 2,910 3.9 4,700 4.9
USD/その他 15,860 24.1 16,130 21.6 22,070 23.0
EUR/その他 5,460 8.3 5,900 7.9 7,390 7.7
JPY/その他 1,250 1.9 1,340 1.8 1,340 1.4
その他ペア 1,050 1.6 1,420 1.9 1,540 1.6
合計 65,810 100.0 74,680 100.0 95,950 100.0

※取引高は各年の合計取引額(100%ベース)にシェア%を掛けて算出した概算値です(国際通貨研究所レポートの通貨ペア別シェア推移をもとに作成)。BIS原資料の通貨ペア別金額表とは集計・丸め方が異なるため、多少の誤差があります。

2022年はAUD・CADのシェアが下がり、CNYが上がる動きが目立ちましたが、2025年はその傾向がさらに強まっています。
FX業者が主に扱う通貨ペアとしてみると、これまでどおり10種類から20種類程度が中心ですが、USD/CNYの存在感が明確に増している点が今回の調査の特徴です。
背景には、中国人民元の国際化の進展と、新興国通貨全体への取引の分散化があります(詳しくは次章)。

3. 通貨別のシェア(USD・EUR・JPY・GBP・CNY)

BISの通貨別シェアは、全体を100%ではなく200%として表示します。すべての外国為替取引はUSDとJPYのように2つの通貨の間で行われますが、この調査では通貨ごとに取引を集計するため、1つの取引が両通貨のサイドで2回ずつカウントされるためです。

通貨 2022年シェア% 2025年シェア% 増減
米ドル(USD) 88.4 89.2 +0.8
ユーロ(EUR) 30.6 28.9 ▲1.7
日本円(JPY) 16.7 16.8 +0.1
英ポンド(GBP) 12.9 10.2 ▲2.7
中国人民元(CNY) 7.0 8.5 +1.5
スイスフラン(CHF) 5.2 6.4 +1.2
豪ドル(AUD) 6.4 6.1 ▲0.3
加ドル(CAD) 6.2 5.8 ▲0.4
香港ドル(HKD) 2.6 3.8 +1.2
シンガポールドル(SGD) 2.4 2.4 ±0.0

上位5位(米ドル・ユーロ・日本円・英ポンド・中国人民元)の顔ぶれと順位は前回から変わっていません。
米ドルのシェアは引き続き高水準で安定しており、世界の外国為替取引の約9割が米ドルを相手方として行われていることになります。決済通貨(媒介通貨)としての基軸通貨機能は、依然として盤石です。

中国人民元の躍進

今回の調査で最もシェアを伸ばしたのが中国人民元(CNY)です。
順位自体は前回と同じ5位にとどまったものの、シェアは7.0%から8.5%まで上昇し、4位の英ポンド(10.2%)との差は大きく縮まりました。
一方、ユーロと英ポンドは今回・過去10年ともに低下傾向が続いており、日本円も今回はほぼ横ばいながら、長期的には低下トレンドにあります。

※ユーロ・英ポンド・日本円などの先進国通貨が全般にシェアを落とす一方、香港ドルやインド・ルピーなど新興国通貨は少しずつシェアを伸ばしており、取引通貨の分散化が緩やかに進んでいます。

4. 国・地域別のシェア(ロンドン・NY・シンガポール・香港・東京)

国・地域別の取引シェアでは、1位の英国から5位の日本まで、前回2022年から順位の変動はありませんでした。上位5市場だけで世界の外国為替取引の78.7%を占めています。

順位 国・地域 2022年シェア% 2025年シェア% 増減
1 英国(ロンドン) 38.0 37.8 ▲0.2
2 米国(ニューヨーク) 19.5 18.6 ▲0.9
3 シンガポール 9.5 11.8 +2.3
4 香港 7.1 7.0 ▲0.1
5 日本(東京) 4.4 3.5 ▲0.9
6 ドイツ 1.9 3.1 +1.2
7 スイス 3.6 2.9 ▲0.7
8 カナダ 1.8 1.9 +0.1
9 フランス 2.2 1.9 ▲0.3
10 中国 1.6 1.9 +0.3
その他 10.7 9.6 ▲1.1

英国・米国は今回やや低下したものの、近年の横ばい圏の範囲内で高水準を維持しています。
最も目立つのはシンガポールで、9.5%から11.8%へとシェアを大きく伸ばし、香港・日本との差をさらに広げました。香港はほぼ横ばいで、2020年6月施行の香港国家安全法の影響とみられる伸び悩みが続いています。

東京市場の地盤沈下

日本(東京)は5位を維持したものの、シェアは4.4%から3.5%へ低下し、2000年代初頭から続く趨勢的な低下傾向に歯止めがかかっていません。
かつては英国・米国に次ぐ位置にあった東京市場ですが、2010年代に香港・シンガポールとシェアが逆転し、その差は年々拡大しています。2010年前後からの英国・シンガポール・香港といった国際金融都市への取引集中が、東京の地盤沈下の主因とみられます。

※ちなみに日本円そのものの取引は、15.8%が国内(日本)市場で行われている一方、残り84.2%は海外市場で取引されています。円は「日本で取引される通貨」というより「世界中で取引される通貨」という性格が強いことが分かります。

5. まとめ

  • 2025年4月の世界の外国為替取引額は1日あたり9兆5,954億ドル(前回比+28.5%)。実体経済の拡大ペースを上回るペースで、市場規模の拡大が続いている。
  • 通貨ペア別ではEUR/USD・USD/JPYの上位2位は不動だが、USD/CNYがUSD/GBPを抜いて3位に浮上
  • 通貨別シェアでも中国人民元が今回最も上昇幅が大きく、英ポンドとの差が縮小。米ドルは約9割の取引で相手方となる基軸通貨の地位を維持。
  • 国・地域別では英国・米国・シンガポール・香港・日本の上位5市場の顔ぶれは不変だが、シンガポールの伸びと日本の地盤沈下が対照的。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨・通貨ペアの売買を推奨するものではありません。市場動向・シェアは今後の調査で変わり得るため、最新の一次情報もあわせてご確認ください。

参考:
OTC foreign exchange turnover in April 2025(BIS)
Triennial Central Bank Survey of foreign exchange and OTC derivatives markets in 2025(BIS)
外国為替及びデリバティブに関する中央銀行サーベイ(2025年4月中取引高調査)日本分集計結果(日本銀行)
2025年BIS世界外国為替市場調査について(公益財団法人 国際通貨研究所)