政府・日銀により、24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入が2022年9月22日に実施されました。
さらに10月21日と週明けの24日にも、実施を公表しない、いわゆる覆面介入が行われ、結果的に1ドル152円手前で円安を食い止めました。
ただ、これは本当に効果があったのか微妙なのでは?と思ったわけです。
政府・日銀のスタンスは最初から「急激な円安を抑制する」のが目的で、継続的な円高に誘導できないことは自ら理解していたのではないかとは思いますが…

為替介入

Reference: 外国為替平衡操作の実施状況
為替介入は、財務大臣の判断で、日本銀行が財務省の代理人として実施します。資金は財務省所管の外国為替資金特別会計(外為特会)から出ます。
米国の「監視リスト」:
為替介入を簡単にできない理由の1つに、米財務省の為替報告書があります。日本は「為替操作国」に認定されたことはありませんが、為替政策を重点的に監視する「監視リスト」に入っていました(2023年6月の報告書で日本は監視対象から除外。その後2024年6月に再び監視リストに入り、2026年10月時点でも監視対象のままです)。
外貨準備高の問題:
円安にする(円売り介入)なら、政府短期証券を発行して円を調達すればよいので、資金の制約はほとんどありません。
一方、円高にする(円買い介入)には、手持ちの外貨(米ドル)を売って円を買わなければいけません。
つまり、すぐに使える米ドルがどれだけあるかという問題になります。
そのため、以前は日米の協調介入でアメリカと一緒に介入したこともありました(1998年6月の円買い協調介入など。元財務官の榊原英資氏も説明していました)。
アメリカへの根回し:
これらの理由から、アメリカへの根回しが必要になってきます。
2022年7月にはイエレン財務長官が「為替介入はまれで例外的な状況でしか正当化されない」という趣旨の発言をしていました(裏を返せば、例外的な状況であればOKとも受け取れます)。
賛成はしないけれど、黙認という感触とも取れるわけです。
また、最初の9/22の介入に際しては、米財務省の報道官が「最近高まっている円のボラティリティを下げる目的だと理解している」という趣旨の発言をし、反対はしていないというスタンスを示しました。
さらに、岸田総理が国連総会出席のため訪米していたタイミングでもありました。
介入当日の9月22日(現地時間、日本時間では23日未明)にはニューヨーク証券取引所における講演も行っています。
9/22 政府・日銀介入
介入時のチャートを見ると、2兆8,382億円の投入で5円程度の円高効果が出ていますが、その後の動きを見ると、これって失敗したのでは?と思ってしまいます。

9/22の日本時間17時過ぎ、日銀総裁会見を受けて1ドル145円90銭まで円安が進んだところで介入が始まり、140円台前半まで円高が進みました。
ただ、その後レートは翌日の金曜と週明けの月曜には元の円安水準に戻ってしまっています。
2.8兆円の介入で、急激な円安が一時的に収まったとは言えますが…
神田財務官は「先ほど断固たる措置に踏み切った」と介入を認めていました。
10/21, 10/24 覆面介入

2回目の介入は直後には公表されなかったので覆面介入となりましたが、10月21日(金)の日本時間23時半ごろ、1ドル151円台後半(高値151.94円)からの介入で、5円以上の円高に誘導できました。
週明け24日の早朝、再び円安に戻りかけたところで再度介入が入り、多少の円高に流れていきました。
財務省の公表によると、介入額は10月21日が5兆6,202億円、24日が7,296億円(計6兆3,499億円)で、21日の額は円買い介入として当時の1日あたり過去最大でした。
ここで、円買い介入は円売り介入よりも難しく、売るための米ドルが必要です。外貨準備の大半は米国債などの証券で、すぐに使える預金は一部にすぎないため、市場では介入余力は限られていると見られていました。
ただ、本来ならアメリカから反発されかねない米国債の売却も可能であると見せ、約1.2兆ドル(2022年9月末時点、約180兆円)の外貨準備という余力で、市場に圧力をかけることもできたようです。
11/10 消費者物価指数(CPI)の鈍化
11月10日に発表された米CPI(10月分)は、総合・コアとも伸びが予想を下回りました。
インフレ鈍化で米国の利上げペースが減速するとの見方が広がり、結果ドル円が大きく下落しました。

政府・日銀の介入は急激な円安を抑えることはでき、弱いながら下落トレンドになりました。さらに強い円高への流れを作ったのは米国の指標でした。
政府・日銀の元々の目的は急激な円安を抑えることなので、それは達成された。
その後、2023年1月には127円台まで円高が進みましたが、本質的な問題であるアメリカのインフレと利上げ、それに対して日本は金利据え置きという日米金利差は解消されておらず、2023年6月末には再び145円前後まで円安が進みました(この記事の初出時点)。
他の通貨ペアへの影響
ドル円は介入で短期的に大きな影響が出ましたが、他の通貨ペアではどうなるのか、今後のために確認してみましょう。
10月21日の介入時(MT4時間 17:36〜19:02、日本時間 23:36〜翌1:02)の値動きです。
| 通貨ペア | レート(介入前 → 後) | pips |
| USDJPY | 151.639 → 146.182 | -545.7 |
| EURJPY | 148.097 → 144.189 | -390.8 |
| AUDJPY | 95.275 → 93.140 | -213.5 |
| EURUSD | 0.97668 → 0.98663 | 99.5 |
| AUDUSD | 0.62818 → 0.63778 | 96.0 |
| EURNZD | 1.71818 → 1.71095 | -72.3 |
| AUDNZD | 1.10533 → 1.10635 | 10.2 |
| NZDCHF | 0.57357 → 0.57411 | 5.4 |
一番変動したのはUSDJPY・クロス円などの円がらみの通貨ペアで、その次がドルストレート(ドル安方向)とわかります。
影響をあまり受けなかったのは、円も米ドルも含まないAUDNZDやNZDCHFのようです。
USDJPY: 151.639 → 146.182

EURJPY: 148.097 → 144.189

AUDJPY: 95.275 → 93.140

EURUSD: 0.97668 → 0.98663

AUDUSD: 0.62818 → 0.63778

EURNZD: 1.71818 → 1.71095

AUDNZD: 1.10533 → 1.10635

NZDCHF: 0.57357 → 0.57411

その後の2024年・2026年の円買い介入(日米協調介入を含む)は、こちらの記事でまとめています↓















