仲値トレードで利益が出せるのか

早朝に米ドル円を買って仲値直前で売ると儲かると、その道の諸先輩から以前聞いたことがあります。実際どうなんでしょうか?EAを作って検証してみました。

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東京仲値

 

仲値とは金融機関が為替取引をする基準レートで基本的に1日1回決めます。

  • TTS(電信売相場):銀行が外貨を売るレート=顧客が円を外貨に替えるときのレート(仲値 + 手数料)
    • 輸入業者が海外への支払いのために外貨(ドル)を買う
  • TTB(電信買相場):銀行が外貨を買うレート=顧客が外貨を円に替えるときのレート(仲値 – 手数料)
    • 輸出業者が海外から受け取った代金(ドル)を円に替える

例えば、みずほ銀行の外国為替公示相場では、米ドルのTTS・TTBは仲値に対してそれぞれ1円の手数料が上乗せ・差し引きされています。

仲値は午前9時55分のレートを元に各銀行が決めて公示するレートで、その前後の米ドル/円には以下のような傾向があると言われています(100%ではありません)。

  • 9:55にUSDJPYが高くなる
  • 9:55後はUSDJPYは急落する

ということです。
実際のチャートで見てみると、確かに9:55を頂点にUSDJPYが上昇して下落している様子がわかります。(2020/7/21, USDJPY)

USDJPY provided by TradingView

この前後30分で合わせて10pipsほどの利益が見込めるのが分かります。

ここで疑問なのは、輸出業者(ドル売り)も輸入業者(ドル買い)もいるのだから、需給は相殺されて偏りは出ないのではないか、という点です。

これには色々な説があります。輸出業者は大企業が多く、為替予約などで仲値にとらわれずに銀行と取引できる一方、輸入業者は中小の小口が多く仲値での決済が中心になる、といった違いです。

その結果、輸入企業のドル建て決済のためのドル買いが仲値に集中し、金融機関の手持ちのドルが不足して外国為替市場でドルを買うため、仲値に向けてドル高円安が進みやすい、という説明です(マネックス証券のコラム)。
ドル高円安になりやすい時間帯を狙ったデイトレード

 

元為替ディーラーによると、仲値決定までの銀行の動きは以下のようになっています。

  • 金融機関は全支店から取扱高の報告を受けてネットポジションを把握しカバー取引を行う
  • ドル円で輸出入の集計後、輸出超の場合は「余剰」と呼び、仲値決定に向けてドル円をカバー取引として市場で売る
  • 輸入超の場合、「不足」と呼び、ドル円を市場から買う

仲値の需給は「不足」に傾くことが多く、9時55分に向けてドル円に上昇圧力がかかります。
特に「ゴトー日」と呼ばれる5日・10日・15日・20日・25日・月末(休日の場合は前営業日)は企業の決済が集中するため、仲値のサイズが大きくなり、上昇圧力が顕著になりやすいとされています。

なお、仲値(公示相場)は銀行ごとに微妙に異なります。各行の資金需要などが反映されるためです。
外国通貨の公表相場表、銀行によってなぜ違う?


 

 

9:30買、10:00決済

 

以前、ある業者から「仲値トレード」という名目でメールが送られてきました。

レポートによると、2019年6月3日~2020年7月10日の最近の1年間でASK(買)始値とBID(売)終値を比較検証したようです。

9時30分に買い(新規)、10時00分に決済

営業日数 始値 > 終値 始値 = 終値 始値< 終値
289日 141日 2日 146日

具体的にトレードした場合の収益

始値と終値の
差の合計
始値と終値の
差の平均
1万通貨で
取引した際の損益
利食い金額
の平均
損切り金額
の平均
140.9pips 0.4pips ¥14,090 ¥640 ¥-560

 

買いで利益になるのは「始値<終値」の日なので、勝率は 146/289 = 50.5%。ほぼイーブンで、この検証から優位性があるとは言えません。

もっとも、仲値が決まるのは9:55なので、9:30買い・10:00決済というタイミングが適切かどうかは疑問です。

1回あたり平均0.4pipsでは、スプレッドや約定の遅れ(スリッページ)を差し引くとほとんど利益は残りません。

 

10:00売、10:30決済

 

今度は上がったUSDJPYが下落するタイミングを狙ってみます。
つまり10時00分に売り(新規)、10時30分に決済です。

2019年6月3日~2020年7月10日

営業日数 始値 > 終値 始値 = 終値 始値< 終値
289日 158日 2日 129日

具体的にトレードした場合の収益

始値と終値の
差の合計
始値と終値の
差の平均
1万通貨で
取引した際の損益
利食い金額
の平均
損切り金額
の平均
325.1pips 1.1pips ¥32,510 ¥610 ¥-500

今回は多少勝率も上がり利益になっています。売りで利益になるのは「始値>終値」の日なので、158/289 で勝率は 54.7%。
1万通貨で1回あたり約110円の利益です。

仲値後の売りにはある程度優位性がありそうですが、値動きとしては微小です。

取引量を10万・100万通貨に増やせば利益も比例して増えますが、損失も同じように増えます。また、ここからスプレッド分のコストも差し引く必要があります。

ちなみに、このレポートを送ってきたのはマネーパートナーズです。米ドル/円のスプレッドが狭い業者であれば、多少は利益が残るかもしれません。

 

EA自動売買での検証

 

MT4の自動売買、EAで検証してみましょう。

MQL4を使って簡単な検証用EAを作成します。

  • 設定時間でエントリーして決済
  • TP、SLは50pips程度(途中で決済されないように余裕をもって設定)
  • 時間差調整、日本時間GMT+9、夏時間、サーバー時間の調整
     
    MT4の時間がGMTそのものでなく+2時間や+3時間(夏時間)というのはどう言うことでしょうか?     結論としては、NewYo...
     

MQL4で9:30に買いエントリーし、10:00に決済するEAを作成しました。
また、10:00売り・10:30決済に変更したバックテストも行いました(いずれも2019年6月~2020年7月)。

■ 9:30買い、10:00決済


 
バックテストではスプレッドを0にできなかったので、0.3pips(3ポイント)で検証しました。

総取引 勝率 1万通貨で
取引した際の損益
利食い金額
の平均
損切り金額
の平均
288 52.08% ¥15,650 ¥628 ¥-569

メールのレポートとほぼ同じ結果でした。

 


■ 10:00売り、10:30決済

総取引 勝率 1万通貨で
取引した際の損益
利食い金額
の平均
損切り金額
の平均
288 53.47% ¥35,060 ¥642 ¥-476

こちらもレポートと同様の結果です。勝ったり負けたりしながら少しずつ利益が積み上がり、2020年の新型コロナショック以降は損益カーブが上向いています。

 

まとめ

 

2003/05/05~2021/06/30 の約18年間で、買いと売りを組み合わせたバックテストを行いました。

仲値(9:55)に合わせて、時間もより正確に設定します。

  • 9:30 買い、9:54 決済
  • 9:55 売り、10:30 決済

総取引 勝率 1万通貨で
取引した際の損益
利食い金額
の平均
損切り金額
の平均
8915 55.50% ¥825,140 ¥690 ¥-653

年平均で約¥45,000(1万通貨)の利益です。改善すれば実用になりそうな感じです。

ただし、この結果はスプレッド0.3pipsという好条件でのものです。取引回数が8,915回あるため、スプレッドが0.1pips広がるごとに利益は約89,000円減ります。計算上、スプレッドが約1.2pipsを超えるとトータルで損失になります。

改良の余地としては、ゴトー日を考慮することが挙げられます。こちらは別の記事で検証しました。

https://fx-ai-trading.com/ea/nakane-gotobi.html

 

仲値EA

 

仲値を使った自動売買EAはいくつか販売されています。興味深いのは、コロナ禍の2020年3月に大きな利益を出しているEAが多いことです。

以下は仲値・ゴトー日を利用したEAで、GogoJungleで購入できます(2026年10月時点で販売中のもの)。

 

 

東京仲値

 

フォワードテストとEA説明から

  • 9:30に買い、9:54に手仕舞い
  • 9:55に売りエントリーし、決済は指定時刻またはTP/SL

初期設定は1ロット(10万通貨)で売りのSLが15pipsなので、1回の負けは約-15,000円です。バックテストはきれいな右肩上がりですが、フォワードテストのプロフィットファクターは1.03程度(2026年10月時点)と、近年は伸び悩んでいます。

 

 

仲値の極み

買い2ロジック+売り2ロジックの計4ロジックで、毎日の仲値の売買に加えて、ゴトー日や金曜日の売買も組み合わせたものです。祝日・年末年始のフィルターも備えています。こちらもバックテストはきれいな上昇カーブです。
 
仲値の極み | GogoJungle
 

 

時間は平等

 

こちらは仲値からの売りをメインにして、9:55までの買いポジションはゴトー日だけ(初期設定)のようです。
 

 

ルールメイカー

 

これは仲値トレードだけではなく、様々なテクニカル手法を組み合わせてEAを自分のルールにカスタマイズできるというものです。
初期設定は仲値トレードで、バックテストはきれいな右肩上がりですが、フォワードテストは当初ちょっと残念な結果となっていました。
 

 

東京神話

 

Trader Kaibe氏のEAで、ゴトー日など仲値トレードに優位性がある日だけ取引します。深夜の安値圏で買って仲値付近の高値で決済する買いロジックと、仲値付近で売って下落したところで決済する売りロジックの2本立てで、1ポジション型です。
 

 

Gna USDJPY

仲値(9:55)からの売りに特化したEAです。夕方までに決済を終えるため、VPSを使わずPCでも運用できます。
v2.0で成績が落ちたので2026年1月にv3.0へ更新されその後は回復しています。
Gna USDJPY | GogoJungle

買いは使わず、仲値後の売りに絞っているのが特徴です。上の検証でも、仲値前の買いより仲値後の売りの方が優位性が残っており、それと一致する方針です。

 

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