リスクオン・リスクオフで狙う通貨ペアの選び方
為替相場は「リスクオン」「リスクオフ」という言葉で語られることがよくあります。本記事では、この2つの相場つきでどの通貨が買われ、どの通貨が売られるのか、そして実際にどの通貨ペアでポジションを取ればよいのかを、通貨ごとの性格までさかのぼって整理します。
目次
1. リスクオン・リスクオフとは
リスクオンとは、景気拡大や金融不安の後退といった楽観論が優勢になり、
投資家がリターンを求めてリスクの高い資産へ資金を振り向ける状態を指します。
株式や新興国通貨、資源国通貨が買われやすくなります。
リスクオフは、その反対です。
景気減速、金融システム不安、地政学リスクなどから悲観論が強まり、
投資家が相対的に安全とされる資産へ資金を退避させる状態を指します。
国債や金、そして「安全通貨」と呼ばれる一部の通貨が買われます。
| 局面 | 買われやすい資産 | 買われやすい通貨 |
|---|---|---|
| リスクオン | 株式・社債・新興国資産・コモディティ | USD・AUD・NZD・CAD EUR・GBP・新興国通貨 |
| リスクオフ | 先進国国債・金・現金 | USD・CHF・JPY |
2. なぜ通貨ごとに「買われ方」が違うのか
通貨の値動きの癖は、おおむね次の3つの要素で説明できます。
銘柄選びの前提として押さえておくと、応用が利きます。
- 金利水準:金利が高い通貨は、リスクを取れる局面で「持っているだけで利息がつく通貨」として買われます。半面、リスクオフでは真っ先に手放されます。
- 経常収支・貿易構造:資源輸出国の通貨は原油や鉱物の価格と連動しやすく、世界景気が強いと買われます。逆に、対外純資産が大きく経常黒字の国の通貨は、有事に資金が戻る「安全通貨」になりやすい傾向があります。
- 流動性と信認:基軸通貨である米ドルは、危機時に世界中で「とにかくドルが欲しい」という需要(ドル調達)が発生するため、リスクオフでも買われます。
3. リスクオンで買われやすい通貨
高金利の新興国通貨
金利が高く、値動きも大きいハイリスク・ハイリターンの通貨です。
リスクオンの初期に急伸しやすい一方、リスクオフでは下落スピードも速くなります。
| 通貨 | 政策金利 | 改正日 | 最近の金融政策の方向 |
|---|---|---|---|
![]() トルコリラ(TRY) |
37.00% | 2026/01/23 | 高インフレ抑制のため 高金利を維持 |
![]() 南アフリカランド(ZAR) |
7.00% | 2026/05/29 | インフレ鈍化を受け 利下げ方向 |
![]() メキシコペソ(MXN) |
6.50% | 2026/05/08 | 連続利下げの後、 いったん様子見へ |
※政策金利・改正日は本記事公開時点のものです。金利は各国の金融政策で頻繁に変わるため、
実際にエントリーする前に必ず最新の値をご確認ください。
利下げ局面の通貨は、スワップポイントも先細りしていく点に注意が必要です。
資源国通貨
| 通貨 | 政策金利 | 改正日 | 主な輸出資源 |
|---|---|---|---|
![]() カナダドル(CAD) |
2.25% | 2025/10/29 | 原油 |
![]() オーストラリアドル(AUD) |
4.35% | 2026/05/06 | 鉄鉱石・石炭 |
![]() ニュージーランドドル(NZD) |
2.75% | 2026/09/02 | 乳製品 |
- オーストラリアドル(AUD):鉄鉱石・石炭などの鉱物資源が主要輸出品。最大の輸出先が中国のため、中国の景気指標に強く反応します。
- カナダドル(CAD):主要な原油輸出国で、WTI原油価格と連動しやすい通貨です。米国経済との連動性も高くなっています。
- ニュージーランドドル(NZD):乳製品が輸出の柱。値動きはAUDと連動しやすく、AUDよりやや流動性が低い分、動きが荒くなることがあります。
欧州通貨(EUR・GBP)

ユーロとポンドは新興国通貨ほど「リスクオンで買われる」性格は強くありませんが、
次のような場面で買われやすくなります。
- 欧州の地政学リスク(軍事紛争・エネルギー供給不安など)が後退したとき
- 景気指標が市場予想を上回り、利下げ観測が後退したとき
4. リスクオフで買われやすい通貨
| 通貨 | 政策金利 | 改正日 |
|---|---|---|
![]() 米ドル(USD) |
3.50%〜3.75% | 2025/12/11 |
![]() 日本円(JPY) |
1.00% | 2026/06/17 |
![]() スイスフラン(CHF) |
0.00% | 2025/06/20 |
- スイスフラン(CHF):永世中立国で経常黒字が大きく、対外純資産国。有事に資金が逃げ込む代表的な安全通貨です。
- 日本円(JPY):世界最大級の対外純資産国であることが背景。ただし「積極的に円が選ばれる」というより、他に買える安全資産が乏しいときの消去法で買われる面が強い通貨です。
- 米ドル(USD):基軸通貨。リスクオフでのドル調達需要で買われる一方、米金利が上昇する局面ではリスクオンでも買われる二面性があります。
「リスクオフ=円高」が以前ほど効かない理由

リーマンショック以降の主要通貨の推移。かつては有事に円・フランが買われた。
2022年以降の米国の急速な利上げで日米金利差が大きく開き、
リスクオフでも「金利の低い円を売って金利の高いドルを買う」流れが優勢になる場面が増えました。
その結果、有事に円が買われる従来のパターンが弱まっています。
もっとも、2026年に入ってからは日銀の利上げ(政策金利は1.0%まで上昇)と
米国の利下げバイアスにより日米金利差は縮小方向にあります。
金利差が縮むほど、リスクオフ時の円買いが復活しやすくなるため、
「今の金利差がどちらを向いているか」を確認したうえで円を含むペアを扱うことが重要です。
5. 具体的な通貨ペアの選び方
基本の考え方はシンプルで、「リスクを取れる通貨」を「リスクを避ける通貨」に対して売買するだけです。
リスクオンなら前者を買い、リスクオフなら前者を売ります。
| 相場観 | 方向 | 候補ペア | 狙い |
|---|---|---|---|
| リスクオン | 買い | AUD/JPY、GBP/JPY、 AUD/CHF、EUR/CHFなど |
資源国・高金利通貨 買い 低金利・安全通貨 売り スワップも受け取りやすい |
| リスクオフ | 売り | AUD/JPY、GBP/JPY、 AUD/CHF、EUR/CHFなど |
リスク通貨を手放し、 円・フランへ退避する流れに乗る |
※クロス円のロングはスワップ収益が魅力ですが、リスクオフでの下落幅も
大きくなりがちです。相場が変わったときにポジションを畳めるよう、
ロスカットラインは事前に決めておきましょう。
6. 今がリスクオンかリスクオフかを判断する指標
通貨ペアを選ぶ前に、まず「今どちらの地合いか」を確認します。
次の指標を組み合わせて見ると、方向感がつかみやすくなります。
- VIX指数(恐怖指数):20を超えると警戒、30超で明確なリスクオフの目安。
- 米国株(S&P500・ナスダック):上昇基調ならリスクオン、急落ならリスクオフ。
- 米国債利回り(2年・10年):利回り低下+株安なら景気不安によるリスクオフ。
- 金(ゴールド)価格:株と逆行して買われていれば資金の退避が進んでいるサイン。
- クレジットスプレッド(ハイイールド債):拡大していればリスク回避の動き。
これらはTradingViewで「VIX」「US10Y」「US02Y」「GOLD」「SPX」などのティッカーを並べて表示すると、
1画面でまとめて確認できます。
7. まとめ
- リスクオンでは新興国通貨・資源国通貨、リスクオフではUSD・CHF・JPYが買われやすい。
- 通貨の癖は金利・貿易構造・流動性の3つで説明できる。
- ペア選びは「リスク通貨 × 安全通貨」の組み合わせが基本。リスクオンで買い、リスクオフで売り。
- 「リスクオフ=円高」は日米金利差しだいで強弱が変わる。2026年は金利差縮小で円買いが復活しやすい局面。
- エントリー前にVIX・株・米国債・金で地合いを確認する。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨ペアの売買を推奨するものではありません。取引はご自身の判断と責任において行ってください。


















