FXで朝起きたら、ポジションが損切りされていたという経験のある人は多いのではないでしょうか。
これが悪名高い ストップ狩り だと怒る前に、
早朝はスプレッドが拡大することを知っていれば、対処できたかもしれません。
実際にスプレッドがどの程度拡大するのか、その理由について調べてみました。
スプレッドの拡大
実は恥ずかしながら、FXを始めたころはそうとは知らずに朝方にエントリーしていたことがあります。
当時はスイングトレードだったのでスプレッドはほとんど気にしていなかったのと、なにより朝の出かける前は時間が限られているので、仕方のないことではありました。
早朝のスプレッド拡大がどの程度なのか、その理由や、具体的に何時からどのくらいの時間続くのかを調べてみましょう。
早朝スプレッド拡大
スプレッドは、MT4時間(GMT+2/+3)の0:00から約1時間、日本時間では早朝の1時間ほど大きく広がります。
拡大の幅はFX業者によってまちまちですが、どの業者でも平常時よりはるかに大きく拡大しています。
こちらはGogoJungleで常時計測している、国内FX業者のUSD/JPYの最大スプレッド(High)の推移です(2023年12月11日(月)、日本時間)。
- 早朝(7:00~8:00、米国夏時間の期間は6:00~7:00)の1時間ほどの間に、10~14pips程度までスプレッドが拡大している
- 業者ごとに多少の差はあるものの、同じ時間帯に同じように拡大している
- この日は月曜日なので、週明けの取引開始直後という要因も重なっている
1週間のスプレッド推移
週単位(2023年12月4日~11日)で見ると、毎朝の拡大以外はほとんど変動していないことがわかります。また、朝の拡大幅は日によって5~12pips程度と差があり、業者によっても差があります。
もちろん、経済指標の発表などインパクトのある場面でも拡大します。このグラフでも12月8日(金)22:30ごろ、米雇用統計の発表時に小さな拡大が見られます。

MT4での計測
実際にインジケーターを利用して、MT4で計測してみました。
IceFX SpreadMonitor(MT4用・無料)
これを使用して、早朝のスプレッド拡大を確認してみます。
国内FX業者と海外FX業者では通常のスプレッドが大きく異なるので、代表的な業者を比較してみました。計測はいずれも2023年11月21日(火)、USD/JPYです。
楽天証券(楽天MT4)
国内業者の楽天MT4は、USD/JPYのスプレッドが
通常 0.5pips 程度です。
2023.11.21 00:00 ~ 01:00(MT4時間)
最大スプレッド:10.69 pips

XMTrading
XMは海外FX業者として人気ですが、スタンダード口座のUSD/JPYのスプレッドは
通常 1.5pips 程度 です。
2023.11.21 00:00 ~ 01:00(MT4時間)
最大スプレッド:11.62 pips

TDS (Dukascopy)
こちらは有料ツールのTick Data Suite(TDS)で、Dukascopyのヒストリカルデータ(ティックデータ)を使い、同じ日・同じ時間帯のスプレッドを確認してみました。
スプレッドは 通常 0.7pips 程度です。
2023.11.21 00:00 ~ 01:00(MT4時間)
最大スプレッド:10.71 pips
ヒストリカルデータにも、早朝のスプレッド拡大はきちんと記録されています。

国内業者・海外業者・Dukascopy(スイスの銀行)と、仕組みの異なる3社で、同じ時間帯に同じ10pips前後まで広がっています。これが拡大の理由を考えるうえでのヒントになります。
スプレッド拡大の理由
例えば、GogoJungleがスプレッドを計測していた外為ファイネストは、スプレッドの実績を公開しています(2022年8月12日公表)。
| 項目 | 公表内容 |
| 対象 | MT4・ZERO(個人コース) |
| 対象期間 | 2022年7月11日~8月5日 |
| 通貨ペア | EUR/USD |
| 広告表示のスプレッド | 0.9pips |
| スプレッド提示率 | 95.94% |
| スプレッド最大値 | 10.4pips |
| 広告表示と異なった要因 | 日本時間早朝などの流動性が低い時間帯、および指標発表等の影響でカバー先のスプレッドが広がったため |
広告表示のスプレッドは原則0.9pipsですが、この期間中には最大10.4pipsまで拡大したということです。
また、当時の資料では、メンテナンス時間は以下のようになっていました。
■定期メンテナンス
【米国標準時】 火、水、木、金曜日の 午前6:58 ~ 午前7:05(7分間)
【米国夏時間】 火、水、木、金曜日の 午前5:58 ~ 午前6:05(7分間)
■週末メンテナンス
【米国標準時】 土曜日午前6:55 ~ 翌週月曜日午前7:05まで
【米国夏時間】 土曜日午前5:55 ~ 翌週月曜日午前6:05まで
業者のメンテナンスは朝の7分間だけですが、計測ではスプレッドの拡大はその後1時間ほど続いています。
公表資料では、スプレッドが広がった要因として次の2つが挙げられています。
- 日本時間早朝などの流動性が低い時間帯
- 指標発表等の影響でカバー先のスプレッドが広がったため
早朝は流動性が下がるのは確かですが、それだけが理由なら、深夜から早朝にかけてもっとなだらかに広がってもよさそうです。実際には、毎朝ほぼ決まった時刻に急に広がり、1時間ほどで元に戻ります。
この「決まった時刻」は、日本時間の早朝、つまりニューヨーク時間の17:00(NYクローズ)です。インターバンク市場ではこの時刻で1日が区切られ、次のようなことが一斉に起こります。
- スポット取引の受渡日が1日先に切り替わり、持ち越したポジションにスワップ(金利)がつく
- 銀行などのリクイディティ・プロバイダー(レートを提示する側)が帳簿を締め、システムを切り替えるため、提示を控えたりスプレッドを広げたりする
- CMEの通貨先物も、毎日NY時間17:00~18:00の1時間は取引を停止する
CMEグループの解説記事(When FX Futures Pause、2026年9月)でも、NYクローズ後の1時間は1日のうちで最も流動性が薄くなりやすく、FX・CFD業者はリスクを相殺(カバー)しにくいため、提示を続けながらスプレッドを広げて対応すると説明されています。
国内のFX業者も、カバー先(銀行など)から受け取るレートをもとに顧客向けのレートを提示しています。カバー先のスプレッドが広がり、カバーもしにくくなれば、顧客向けのスプレッドも広げざるを得ません。国内業者・海外業者・Dukascopyのいずれでも同じ時刻に同じように拡大するのは、このためと考えられます。
以前は「業者自身のメンテナンスが最大の要因では」と考えていましたが、メンテナンスは数分で終わるのに拡大は1時間ほど続くこと、メンテナンス時間の異なる業者でも同じように拡大することから、主な原因はNYクローズ前後の市場全体の流動性低下と見るのが自然です。業者のメンテナンスや日付切り替えの処理も、この時間帯にまとめて行われています。
早朝は夏時間でずれる
多くのMT4業者は、ニューヨーク時間の17:00で日足の終値を決め、そこから次の日が始まるようにサーバー時間を設定しています。いわゆる GMT+2/+3 です。
このため、MT4時間では一年中0:00ごろですが、日本時間では米国の夏時間に合わせて1時間ずれます。
| 期間 | 日本時間 | MT4時間 (GMT+2/+3) |
| 米国夏時間 (3月第2日曜~11月第1日曜) |
6:00~7:00ごろ | 0:00~1:00ごろ |
| 米国標準時間 (11月第1日曜~3月第2日曜) |
7:00~8:00ごろ | 0:00~1:00ごろ |
外為ファイネストのメンテナンス時間が、米国標準時・米国夏時間で1時間ずれているのも同じ理由です。
スプレッド拡大を回避するためには
まず知っておきたいのは、スプレッドが広がると、レート(仲値)がほとんど動いていなくても損切りにかかることがある、という点です。
- 買いポジションの損切り(決済の売り)はBid(売値)で判定される
- 売りポジションの損切り(決済の買い)はAsk(買値)で判定される
- MT4のチャートは通常Bidで描かれるので、売りポジションの損切りはチャート上ではレートが届いていないように見えることがある
たとえばスプレッドが0.5pipsから10pipsに広がると、仲値が変わらなくてもAskは約5pips上がり、Bidは約5pips下がります。損切り幅が5pips程度しかなければ、それだけで決済されてしまいます。朝起きたらチャートでは届いていないはずの損切りが執行されていた、というのはこれが原因であることが多いのです。
対策としては、次のようなことが考えられます。
- デイトレードなら、早朝の時間帯の前に手仕舞いする(私はこれで回避しています)
- どうしても日をまたぐなら、損切りラインは10pips以上の拡大にも耐えられる位置に置く。安易にタイトな損切りラインを置くのは禁物
- 損切り幅を広げる場合は、そのぶん取引数量を減らして、1回の損失額を抑える
- 早朝の1時間は新規の成行注文や指値・逆指値の新規エントリーを避ける
- EAを使う場合は、スプレッドが一定以上のときはエントリーしないフィルターや、時間帯フィルターを入れる
- 月曜日の朝は、週明けの窓開け(土日の間のレート変動)も重なるので特に注意する





















